脳卒中体験記・・・5

左半身不随というのは左手と左足が使えなくなるのだ、とばかり思っていたのですが、それは見えるところのこと、実際には左手と左足だけではありません。顔も口の中も肩も腰もお尻もそれに肛門も、ようするに自分の意志で動かせる筋肉は、たとえ無意識にでも動かすことの出来る筋肉は左半分全部が、言うことを聞いてくれません。
それで脳卒中になったばかりの人の顔は、半分かなり垂下がり、ゆがんで見えます。
実際にご飯を食べていると、口の中で動かない左の方にと噛んだものが行ってしまいます。しかたがないから飲んでしまおうなどと思うと大変、のども左は言うことを聞いてくれませんからこんどは、上手に飲込めずむせってしまいます。頭を右に傾けて右にくるように調整するか、指かスプーンで右にかきよせるしかありません。
お茶や味噌汁を飲むのも大変です。元気なときのような調子でズズズ~などとやったら、気管支に入ってそれはそれは痛く苦し思いをしなくてはなりません。ストローで飲むのが一番安全なのですが、熱い物、小さな具の入っている物ではストローは使えません、それに味もあまりしなくなってしまうものです。
 小水も自分で止めることができるのですから、これも反対に言うことを聞いてくれなくなってしまいました。
 そして大便も同じなのですが、最初便意そのものがないものですから、もう入院してから二週間になるのにと思うと、お腹の中がうんこでいっぱいみたいな気がしてきて、気持ち悪くてしかたありません。
下剤をもらい飲みますが、二錠服んでだめ、こんどは三錠、そして四錠、それでもだめで、ベッドの上でぽんぽんにふくれたおなかをさすって、排便のことばかり考えていました。
 いつ出てもいいように“おまる”はベッドに置いたなり、おばあさんが「出そうになったらオマル取ってあげるからいいがね」というのですが、したいという便意がそんなに待っていてくれそうになく思え、何時来るかもしれない便意をまって、何時きてもいいようにパンツまでおろして待っていたものです。
でも結局だめで、座薬をいれて排便したのですが、「おまる大盛りいちょう」と看護婦さんにいわれてしまいました。
一度など昼食中に催し、我慢ができません。もう出るとなったら止めようもないのです。カーテンを引いてしましたが、目は覆えても臭いはなんともなりません。何日もお腹にたまっていた物は、もの凄い臭いがして、自分でも息ができないほどです。冬でしたが急いで窓を開け放し、それでも充満する臭いはなんともならず、みんなのお昼を台無しにしてしまったこともありました。
 それでも下剤を調整して、なんとか毎日三錠で排便というパターンに、もてくることがきました。
 お尻を持上げることが出来ませんから、お尻をふくこともできず、情けないことにおまるをはずすこともできません。
排便が自分のしたい時に誰も見ていないところででき、自分で始末出来ないことのなんと屈辱的なことでしょう。
ご飯を自分で食べることができるようになると、こんどは自分で排便したくて、それだけが、願いになったものです。
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by takaryuu_spring | 2007-02-01 18:50


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