ズズズ…………杭打機の轟音が、常滑の埋立地をゆりうごかします。暖冬とはいへ師走の海風は身にしみる。
ウ~ゥ~役場のサイレンが昼を告げると、怪獣のような重機のエンジンが一斉に止まり、嘘のような静寂があたりを包みます。 今までゆれていた地面、「あれ、まだゆれている・・・地震じゃないよね」 これが、僕の脳梗塞の始まりでした。 風邪でもひいたのかな?今日のところは切りのよいところで止めにして、早めに帰ろう思ったものです。 三時頃には後片付けも終わり、帰途につくことになりました。 「今ならまだ渋滞には巻き込まれない。早く帰って風呂に入りビールでも飲んで寝ちゃえば、明日には治っているに違いない」と思っていたのですが、不景気とはいえさすが師走の大都会名古屋、そうは問屋がおろしませんでした。 常滑を出て阿久比から乗った知多半島自動車道も、名古屋が近づくにつれ車は増え、とうとう渋滞につかまってしまいました。 多少気分が悪かったのですが、我慢しかありません。助手席で膝をかかえ「やっぱり変だ、着いたら病院だな」と思い始めていました。 結局家に着いたのは、日もとっぷり暮れた六時半、さあ着いたと、トラックを降りる段になってびっくり、トラックから転がり落ちて後は体を起こすことも出来ず、転がったままでした。 相棒もこれには仰天、急いで家内を呼びに走り、ワゴン車をもってきました。 行きつけの病院に事情を話し、着替えて行くつもりだったのですが、もう着替えることもできない状態で、しかたありませんから、どろどろの作業着のまま病院に搬入されました。 タンカにのせられると激しい吐き気、タンカの上で吐きました。昼食べた物がまるで消化されずに出てきます。 症状を聞いてこれは大変なことだ、体ではない、頭だということで、勝ちゃん、茂さん、千代ばあさんら、身内が呼ばれて参ります。 MR検査の結果出血はしていない、まず死ぬこともない、ということでみんな帰されました。 この時まで脳梗塞がどんなものか、誰も理解していませんでした。“脳出血ではない”というだけで、それはかえってどうしようもないことのようです。 脳卒中は脳が死でしまう病気ですが、脳出血と脳梗塞があるようです。 脳出血は血管がパンクして、その圧力で脳細胞が死ぬのに対し、脳梗塞は血管が詰まって、脳細胞が酸素不足で死ぬのだそうです。 どちらも高血圧とか高コレステロールとか、原因は同じようなのですが、脳出血は、一刻も早く手術して、脳細胞に圧力がかからないようにしなければならないのに対し、脳梗塞は反対に血流をよくして、脳細胞が酸素不足にならないようにしなければならないのです。 それで、この日は血液をさらさらにする薬の点滴をうけて、あとは絶対安静に、命には別状ないからということで皆帰されたわけです。
by takaryuu_spring
| 2007-01-24 21:01
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