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酒8

酔っての議論はいつも楽しく際限もないものです。何も知らないのに酔った勢い、専門家を前にいっぱしの大学者になったみたいに意見を言います。脳細胞が媒体の上の分子のようにフリーになっていて、固定されない色々な考えがとめどもなく浮かんでくるのでしょうか。しらふではとても出てこないような考えが、どん出てきて、かえって専門家の参考になったり。
奇想天外な意見、本当に自分がそんなことを考えたのかと後で驚くことはしょっちゅうです。そして羞恥心も多少薄れ、自信は増大しますから思いきった、間違っている意見でもへっちゃらで話せます、これは飲酒の功罪だと思います。そしてそんなことがあるからお酒が楽しくてやめられないのです。
話題はいつも極めて多岐に渡ったため、学生にとっては自分の専門外の知識をかなりつっこんで考える機会が得られ、幅広い、人との付合いと、物の考え方を身につけることができます。
 
僕にしてみれば、飲みたい時に飲みたい人達と飲み代の心配をしないで飲めるのですからこんな幸せはありませんでした。

ところがバブル経済は学生にきれいな服装と車を与え、みんな車を持ち、きれいな服を着るようになりました。
コンパなどでの強制や一気飲みも、新聞などで批判されることが多くなり、その結果以前のように馬鹿酒は飲まなくなりました。
車に乗って帰ることが前提になりますから、飲み明かすことなどうんと少なくなり、今までの飲み代はガソリン代や服を買う時代に変わりました。同時に団体で行動することも少なくなり、個人単位のごく少ない気の合った同志でしか飲むこともなくなったようです。
それは畢竟話題を平凡ないつもしているものと同じものにし、延々と埒もなくするような話はなくなりました。
一度そんなになると客層ががらりと変わってしまい、なにをやってももう盛り上がりません。一緒に騒いでいた連中も残っていましたがどうも浮いてしまい、ただの馬鹿としか映らなくなってきます。
そんなとき僕の飲みすぎの体に少し変調も現われてきました。酒が弱く朝まで残り、もう飲み屋も限界だと感じたとき、本当におもしろくなくなってしまいました。商売が好きなのとは違って飲んで騒いでいることが好きだったのですから。

「もう店をやめる」と言うと最後に僕の招待を受けてくれと言って、床屋の小原さんがとても素敵な演出をしてくれました。誘われたのは常連中の選りすぐり最後の常連でした。
by takaryuu_spring | 2006-09-26 18:54


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