ポルポトの涙
カンボジアのこともポルポトのことも何も知りませんが、なんとなく解るような気がするのです。 こーこっこっこっこっこ・・・家々の台所から煙が立ち上り始めます。庭では鶏がみみずをほじくるのに懸命ですし豚はその鶏のいそがしく土をつつくのをものうそうに顎を地面に付けて眺めています。犬は台所を覗き込んで餌の催促でしょうか。 鐘の音をさせて若い僧の一団がやって来ました。家々の主婦はそれを待っていたかのように器に山盛りのご飯をかかえて飛び出してきます。そのご飯を僧の鉢に移すと僧は合掌してそれをずた袋に入れ無表情に立ち去ります。主婦もやはりこれも当たり前のようにまた家に入ました。 日本と違い小乗仏教のこの国では成人する前に男は必ず一度出家するのです。そしてここで人としての生き方・礼儀作法・読み書き・から計算まで習うのです。ですからみんなよろこんで喜捨しますし托鉢を受ける僧も懐かしい実家の近くに毎朝こうやってくるのが楽しみなのです。 人々は適当に働けば適当に米が取れ、魚が取れ、時々鶏や豚を市場に売りに行って服なんかを買い、何の不服も別にありません。多くを貯えることもなく、何が欲しいというわけでもなく 日々生きていることが楽しみでした。 これがタイ・ベトナム・カンボジア・ラオス・ビルマといったインドシナ半島の小乗仏教国でした。 西洋人がここに来るまでは決して、変りそうにもないそんな生活があったのです。 西洋人がまずここの農業を変えました、彼らは自分たちの欲しいものをここの人達に作らせ、代わりに珍しい物を持ってきました。それで生活も変わり始めました。色々欲しいと思う物も出て来ます。人々はだんだん欲張りになりお金を貯めることをし始めました。のんびり生活を満喫するより欲しい物の為にあくせく働くことが多くなりました。 そのうちに働かないことは悪いことになり、物事の価値はお金で勘定されるようになりました。 それでも二千年も続いた生活はそんなに一度に崩れるとは思えませんでした。 ところがベトナム戦争が始まりアメリカは共産圏に勝つ為に爆弾よりも沢山のげんなまを降らせ、人々は簡単にお金を手にすることができるようになり、それを使うとなんでも欲望が満たされるお金という麻薬の虜になってしまったのです。 イギリスが中国を阿片で骨抜きにしたように、否それ以上に猛毒なお金という麻薬によって東南アジアは完全に毒されてしまいました。 文明が戦争をしているのだ、文化的な生活が我々から人間的な生活を奪ったのだ。昔のままでいたら仲良く分け合って生活していたのに。 「アメリカが悪い、金が悪い、それを感染させるのが教育で、これらに感染したものはもう決して治ることはない、だから退治するより仕方ないのだ。」ポルポトはきっとそんなふうに考えたのだと思います。 少し極端な考えですが少し理解出来るところも有るような気もします。 隆介
by takaryuu_spring
| 2006-07-22 22:36
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