板前修行5

そのすぐ後、お前も朝食のスタッフに入るように言われました。最初は主任について、勉強するはずだったのです。
朝食係は6時出勤。僕はすぐ前の寮に住んでいましたからそれより前に出勤して、覚えた事はやっています。ご飯は賄いのおばさんの仕事でその準備も出来まいた。
昔の旅館の朝食といえば、ご飯・味噌汁・のりに卵・香のもの、それに干物なんかが定番でした。本丸もホテルの請負でしたからその程度、誰でも出来る仕事でした。ただ4ヶ月の素人がお客にもてなすとなれば違います。
待てど暮らせど来ない主任、朝食の時間もせまり、しかたありません味噌汁を作り、さつま揚げを焼いて、漬物にかぶらの皮の塩もみにす橘の汁をかけた即席漬けを出しました。
結局主任はバイクの故障で9時の出勤、結構好評の朝食で、以来一人でやる事になりました。
仕事の量が増えても給料に反映などされません。川俣さんなど「俺は4年めに6000円もらえるようになった」です。僕も本丸では女の子、アルバイトの半分くらいしか給料はありませんでした。
でも部長は僕を気に入ってくれ、店が引けてから、友達が店を出したから挨拶に行くなどといって連れて行ってくれました。「俺についてこいよ、悪いようにはしないから」何時もそういっていました。
皆で飲みに行く事もあるのですが、僕の支払いはありません。払うほど持っていないのですが、誘われなかったことはなく、ただ飲んだ後トルコなんかに行く時は、そこまでは面倒をみてくれませんでした。
飲みに行く先は友達の店で、飲むより料理の話ばかりです。皆いずれは一城の主になる事を夢見て、それを果たしている人のところに行っていろいろ聞くのです。20代の皆には何でも夢、20代で店を出している人は羨望の的でした。
8ヶ月くらい経った時、突然総上がりの話が出て、準備をするまもなく追い出される事になりました。調理師会とは良く出来た仕組みで、出たその日から次に働く店を決めていてくれます。店に置いてある自分の持ち物を整理して、僕は何も持っていませんでしたから、ただそわそわしていただけでしたが、「隆介、お前は残れ!」という部長の言葉に??なぜ??お前には残って欲しいというここの社長の意向で、お前を執ったのは俺ではないからだ・・・・
僕は一人だけ残されてしまいました。
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by takaryuu_spring | 2006-10-11 21:09


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