板前修業4

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イカ刺
イカの刺身では甲イカか剣先イカかどちらかを普通使います。甲イカは皮を剥いて、内側の薄皮をはいで刺身にします。ねっとり舌に絡む甘さが特徴のイカで、剣先イカは細切りにして歯ざわりのよい爽やかな味が心情です。
イカ刺の美味しさには、歯ざわり、口当たり、味などいろいろな要素が絡み合うのです。本丸では他の料理との関係を考えての事でしょう、紋甲イカを使っていました。皮は簡単に剥がれますが、中の薄皮を剥くには技術がいります。腹側から俎板にのせ、イカの下の端に包丁をそっと引いて、薄皮を切らないように身だけ切って上に引けば、切れずに残った皮を引いて剥けるのですが、薄皮まで傷をつけてしまえば、途中で破れて全部を剥ぐことが出来ません。そうすると布巾を使ってこすりとるのですが、この包丁の技一つで100倍の労力が不要なるのです。
イカの繊維はスルメを見れば判るように横に走っています。身の厚い甲イカは横に1cm×5cmくらいの短冊に切り、5㎜くらいの切込みを入れて太鼓橋のように盛り付けます。剣先イカは7cm幅に切って、それを縦に細く切ります。イカの繊維を切るためで、イカ素麺でも、ただ切ればいいというものではないのです。魚も筋の走り具合を見て裁断すれば筋を感じさせないように沢山の刺身が取れます。これは宮大工の木取も同じ事でしょう。1本の檜の大木から何本の正目の柱が取れるか、その目利きがとても大変な仕事だといいます。鰤1本どこをどう使うか、それは本では覚えられない事です。
4ヶ月位経った時、部長は二人の鍋洗いに、鯖を「おろしてみろ」これは賄いだから、と言いました。おろしたことないと困った前田君。僕は見よう見まねでグサッと頭に包丁を入れます。ゴッと骨に当ります、腹を割いて腸を出し、骨にそって包丁をごしごし、なんとか3枚におろしました。
「骨を切らないように、包丁がいくらあっても足りないぞ、関節の間を通すのだ、鯖のような魚は一太刀でおろす、大名おろしという方法です。
鰻の関東の背開き関西の腹開き、使う包丁も切り出しナイフのようなもの。日本剃刀みたいなもの、小出刃・・・、ふぐの包丁も・・中華の1本の包丁で全て、というのとは大違いの和食です。美味しければいいのではないのです。干物も腹から割ったものと、背から開いたものがあり、今だれも気にもしないのでしょうが、日本の食べものとは美味しいこと以上にこだわっている事、誰も気がつくはずもないところへの心遣いが世界なのです。
牛刀も一本ありましたが、それは西瓜や南瓜を切るためのもの。和包丁はたいてい片刃で硬い皮の西瓜など半分に切る事がほとんど不可能なのです。包丁を研ぐ事が朝一番の仕事でした。片刃の和包丁は刃の方だけ研いで、最後に裏の反りを返します。
牛刀は全部鋼ですから両面を研ぎます。牛刀は刃が弧になっていて、キャベツの千切りなどテコの要領で刃先を俎板につけ、軽く持って上下に下ろして切ります。和包丁は直線の刃先で、前にも書いたように突く感じで切ります。その切り口の差を誰も気になどしないのですが・・・

図は和の野菜包丁と牛刀のつもりです。青し部分が刃金、鋼ともいい牛刀は全部鋼です。赤丸葉自分の手を切らないように欠いて取っていました。
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by takaryuu_spring | 2006-10-10 21:40


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